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離婚について

婚の全体像

 離婚案件においては、実にさまざまな事項を検討しなければなりません。
 一般的な時系列に応じた、必要な検討事項は、以下のとおりです(事案によって多少変わり得ます。)。
モデルケース

婚手続

どんな手続で離婚できるの

 離婚は、①離婚届を提出して実現する(協議離婚)か、②裁判所を利用して実現する(調停離婚、審判離婚、和解離婚、裁判離婚)しかありません。
離婚に関する手続きの流れ

それぞれどんな内容なの

 協議離婚は、裁判所を利用しない話合いによる離婚です。

 調停離婚は、裁判所を利用した話合いによる離婚です。
 離婚は、身分関係の変動を伴うもので、離婚意思の確認には慎重さが求められますから、当事者が裁判所に出頭しないまま、調停を成立させることは、できません。しかし、ほぼ合意が整っているにもかかわらず、遠方から出頭が必要となると、不都合が生じますから、調停に代わる審判という手続を利用して、異議が出ない限り、裁判所が定めた内容で離婚を成立させるということも行われています。

 裁判離婚(判決離婚)は、当事者の合意ではなく、裁判所の判断による離婚です。裁判所が離婚を認めるには、後に述べる、民法上の離婚原因があることが必要です。訴訟提起前には、基本的に、離婚調停をしておかなければなりません(調停前置主義)。
 訴訟中は、いつでも和解ができますので、和解により当事者の合意が整えば、和解離婚ができます。

裁判所の利用を避けることはできないの

 弊所は、早期円満な解決を目指すことができ、費用も抑えられる協議離婚による解決ができないか、常に模索しながら離婚案件に取り組んでいます。ただ、協議離婚では、養育費や財産分与などについて明確に定めなくともできてしまうため、離婚協議書の作成や、公正証書などの書面で残せるよう、サポートさせていただいています。
 一方、調停では、顔を合わせずに話ができる、間に裁判所が入るので法律というものさしを用いて話がしやすいなどのメリットがあり、あえて調停を選択することも多いです。
 十分な説明を差し上げた上、ご依頼者様のご意向に沿うように、手続を選択しています。

不受理申出とはどういう制度なの

 協議離婚の場合、離婚届を受け取った役所の戸籍係は、通常、実質的な内容は審査しませんから、そのまま離婚を実現させてしまいます。
 しかし、本当は、一方に離婚届を提出する意思がない場合は、その離婚は無効になるはずです。とはいえ、戸籍係はこれを審査しませんから、たとえば配偶者が勝手に印を付いて離婚届を出してしまっても、離婚したことになってしまうことがあります。
 そこで、離婚の意思がないのに、勝手に離婚届が作成されて受理されてしまうという事態を防止するため、不受理申出制度があります。

 配偶者が勝手に離婚届を出す恐れがある場合には、本籍地の市区町村役場に、離婚届の不受理届出書を提出する(郵送でも可)ことになります。

どんなことが問題になりやすいの

 夫婦の間に子どもがいるときは、未成年の子の親権を定めない限り、離婚ができません。親権について決着がつかず、いつまでも離婚ができないというケースも多く見かけます。

 離婚をスムーズにできるか否かのポイントは、

  • 離婚そのものについて合意ができそうかどうか
  • 親権について争いがあるかどうか
  • 不受理申出がなされていないか

 といえるでしょう。

 それに加え、

  • 民法上の離婚原因が認められるか

 が重要です。
 離婚原因が認められる可能性が高ければ、相手方が敗訴する(離婚が認められる)可能性が高いわけですから、これを説明の上、強気な交渉ができることになります。

婚原因

どんなときに離婚が認められるの

 夫婦が、親権を定めた上離婚することに合意すれば、問題なく離婚はできます。
 ところが、一方が、かたくなに離婚に応じなければ、裁判所の判断により、離婚を認めてもらうしかありません。

 離婚は、一般に、婚姻を継続し難い重大な事由があるとき=婚姻生活が不治的に破綻している場合に認められます。その判断は、簡単なように見えて、実は非常に難しいものです。破綻しているかどうかという法的な評価を伴う問題だからです。

 民法上は、個別の離婚原因として、①配偶者の不貞行為があったとき、②配偶者から悪意で遺棄されたとき、③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき、④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき、などが定められています。これらは、さきに見た「破綻」の例を挙げたものと理解することもできます。
 たしかに、①不貞行為はよく問題になるものの、その他②~④はあまり問題になりません。
 結局は、不貞行為等を含めた「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無が、離婚が認められるかどうかの分水嶺といえるでしょう。

どんなときに「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められるの

 もちろん、ケースバイケースですが、まずは、

  • 別居期間

 をチェックしましょう。外部からも客観的に判断できる、基本となるメルクマールです。
 別居期間そのものの長さ(絶対的期間)に加え、婚姻期間との比較における長さ(相対的期間)もチェックしましょう。

 別居期間が短いと、離婚原因が認められるか、あやしくなります。
 昭和の時代は、10年間などといった長期間がなければ、なかなか離婚を認めないなどといった傾向もないわけではありませんでした。しかし、時代がくだり、別居期間が5年間もあれば離婚が認められるといわれるようになり、いまとなっては、3年間程度でも離婚が認められるとも言われているようです。あくまで目安ですが。
 私の経験では、1年間程度の別居でも離婚が認められたことがあります。仮に、調停を行った上、訴訟提起すれば、どんなに急いでも、別居から1年程度は経過してしまうものです。これらを前提に、別居期間に加え、その他の離婚原因も踏まえて、具体的な検討が必要です。

 では、その他には、どんな事項を検討すればよいでしょうか。

  • 暴行
  • 虐待
  • 重大な侮辱
  • 不労・浪費
  • 犯罪行為
  • 過度な宗教活動
  • 精神障害
  • 性交不能
  • 性格の不一致
  • 親族間の不和

 10人夫婦がいれば、10通りの夫婦生活があります。弁護士は、適切な聴き取りを行い、法的に重要な事実をきちんとつかみ取り、裁判所に主張していきます。

 幣所は、離婚を請求する側の場合、「婚姻経過と破綻」について、粘り強く聴き取り、裁判所に対し、「この夫婦は修復不可能だな」と思わせるような書面、「この夫婦は、離婚させねばならんのだ」と投げかけるような書面を作成し、別居期間に留意しながら、その他の事実も適切に拾い上げ、あなたのための弁護活動に、尽力していきます。
 逆に、これに対する防御をする場合、言った・言わないの水掛け論に惑わされず、客観的な事実・証拠を基礎に、できる限り離婚原因に対する適切な反論を加えるとともに、次に述べる信義則違反の有無をチェックすることになります。

破綻が認められれば、必ず離婚は認められるの

 仮に、破綻が認められていても、離婚請求が信義に反する場合は、離婚が認められないとされています。いわゆる有責配偶者からの離婚請求という問題で、典型は、不貞を働き自ら破綻の原因をつくった者からの離婚を認めてよいか、という問題です。

 弊所の経験上も、たとえば、配偶者が暴力をふるっていた、生活費を入れていなかった、そんな人が自由気ままに離婚請求してくるなんておかしい、といった形で、問題になりやすいように思います。
 弊所では、以下のような点を検討し、離婚請求が信義に反するという主張にも適切に対応をいたします。

  • 有責配偶者の責任の態様・程度
  • 相手方の婚姻継続意思の有無
  • 請求者に対する感情
  • 別居後の双方の状況
  • 離婚となった場合の相手方及び子の状況
  • 時の経過がこれらの諸事情に与える影響

 これらをチェックするなかでは、

  • 別居期間が相当長期間に及ぶか
  • 夫婦の間に未成熟の子がいるかどうか
  • 離婚により相手方が精神的・経済的に過酷な状況に置かれないか

 といったことも、重点的にチェックしていきます。

離婚原因を検討することにどんな意味があるの

 仮に、離婚をのぞんでいるのに、訴訟で決着をつけるしかなくなってしまった場合、離婚原因があるかどうかは、離婚が認められるかどうかの生命線です。

 離婚原因が認められるかどうかで、強気で交渉できるかどうかという点も、変わってきます。

 さらに、婚姻生活の破綻の原因が、どちらか一方にあるということであれば、その者に対し、離婚慰謝料を請求することができますので、離婚原因の有無だけではなく、その原因を作ったのはだれか、さらにその程度などについても、検討が必要です。

居サポート

 子どものためを思うと、別居できない…。そのように述べていたご依頼者様も、別居を決意し、改めてご相談いただくことがあります。別居することは決めたのだけれど、相手方に切り出すのが怖くて、結局できずじまいにいる、というようなご相談もあります。DV案件では、身の上の安全を確保するのが大事です。別居はしたいけど、生活ができるか不安などといったお悩みもあるでしょう。
 さきに述べたように、法的にも、離婚原因の検討などにおいて、別居の有無・期間というのは、とても大きな意味を持ちます。

 弊所は、別居を決意しているご依頼者様、又は別居はしたいけれど後押しがほしいというご依頼者様に、別居のサポートも実施しています。

 別居日(Xデー)を設定したうえ、相手方に悟られないように留意しながらも、別居に向けて身辺整理をしていきます。1度別居してしまうと、物を取りに戻るのは、通常難しくなります(残してきたものは諦める覚悟でいた方がよいでしょう。)から、何をどこまで持ち出すのか、法的に問題はないかなどの検討を行った上で、準備を進めます。
 もちろん、弁護士が、違法行為を助長するようなアドバイスはできません。しかし、裁判例では、夫婦の実質的共有に属する財産の一部を持ち出したとしても、その持ち出した財産が将来の財産分与として考えられる対象、範囲を著しく逸脱するとか、他方を困惑させる等不当な目的をもって持ち出したなどの特段の事情がない限り、違法性はないと判断されているものがあります。事案ごとに、妥当な対応を見極めていきましょう。
 別居後、離婚調停などに備えるために、財産関係の書類のコピーを集めておくと、その後の調停等がスムーズに進みます。財産分与となる対象財産がどこまでかという点につき、隠し財産があるのではないかとお互いに疑心暗鬼になり、対象財産の確定において非常に多大な時間と労力を要する事件も多いですから、資料の収集もきちんとしておくのが望ましいです。少なくとも預金残高の確認はしておいた方がよいですね。

 子どもがいる場合には、園や学校等にも連絡する必要があるかもしれません。後に、相手方配偶者が園や学校等に赴き、事情を知らない園や学校等が子どもを引き渡して、連れ去りの問題を誘発するおそれなどがあるからです。いつ、どのようにして、何を伝えればよいかを一緒に検討できます。

 別居の日には、即日、弁護士が離婚問題に介入した旨の通知をします。あわせて、今後、ご依頼者様に直接接触することは避けるよう通知もします。
 当初、相手方が、状況を理解できずに、混乱に陥ることが予想されますが、経験上、弁護士の通知により、ほとんどの場合では、直接の接触を避けることは可能です。DV事案等、必要がある場合は、警察と連携した対応や、DV保護命令などの手続も検討します。
 なお、別居に際しては、携帯電話についても、確認をしておいた方がよいでしょう。最近の携帯電話は、GPS機能がついているものもあり、こっそり別居して住所を変えたつもりが、携帯電話のGPS機能で居場所がバレバレだったということも生じかねません。また、少し携帯電話の設定をいじるだけでも、たとえばメールにつき転送設定をされるなどすれば、弁護士と依頼者のメールが相手方配偶者にすべて転送されて話が筒抜けなどの事態も生じ得ますから、気を付けておきましょう。

 別居後は、住民票を移すことになると思います。住民票を移動すると、これまで相手方配偶者(多くは父)が受給権者だった児童手当の受給が、子を連れて住所を変えた一方配偶者に変更される契機にもなり得ます。忘れずに移動をしておきましょう。

 別居後は、生活環境が変わってしまいますので、各種手続についての疑問や、生活設計につき、弁護士に相談し、サポートが受けられる点は、弁護士に委任するメリットといえるでしょう。その後の法的手続等にも、スムーズにつなぐことができます。

姻費用

婚姻費用というのは何なの

 このように、離婚について、さまざまな検討が必要です。これするためには、時間がかかります。その間、生きている以上、生活にお金がかかります。

 別居しても、離婚するまでは、夫婦です。配偶者には、ご依頼者様の扶養義務があります。名前からはわかりづらいですが、ご依頼者様、そしてお子様の生活費/養育料としての費用と考えていただければよいと思います。

どうやって計算するの

  実務的には、算定表を利用した、簡易ですみやかな計算が行われています。長年利用されていた算定表が古いものとなってしまったことなどから、令和元年12月23日、新しい算定表に改定されました。

 新しい算定表に関するご紹介は準備中ですので、今のところは、従来の算定表による計算に関するご紹介についての記事を残しておきます。

【従来の算定方法について】
一般に、いわゆる算定表が利用されています。
 弊所では、計算ツールを用意しておりますので、目安としてお使いください(一般的な計算式で計算しているものの、相手方や裁判所で認められることを保証するものではありません。あくまで目安ですのでご注意ください。)。

 必要な情報は、

  • 相手方の年収(額面金額)
  • ご依頼者様の年収(額面金額)
  • 15歳未満の子の人数
  • 15歳以上20歳未満の子の人数

 です。 養育費・婚姻費用計算ツール
 ただし、算定表は、あくまで目安です。
 算定表は、必要な方の生活費や養育料を確保するため、すみやかに計算ができるよう、統計数字を利用して計算しています。そのため、素早く計算できる反面、若干正確性を欠いているという面があります。統計に反映されていない、個別事案ごとの特殊事情を主張する必要があります。

生活費として足りないのではないの

 婚姻費用の計算をおおざっぱに説明すると、夫婦子どもが一緒に生活していた場合にどのように生活費を分担すればよいか、という発想で計算をしています。
 とすれば、配偶者が、ご依頼者様(子ども含む)の独立した生活を保障する趣旨で計算するわけではないので、「生活費が足りない!」というお困りごとが生じることも多いです。
 弊所は、必要があれば、弁護士の指示のもと家計表を作成していただき、家計の見直しを行ったり、生活設計の見直しをお手伝いさせていただいています。

 たとえば、女性においては、金銭面で悩みを抱えるという現実が多く認められます。家計表をチェック、親族等からの援助を受けられるかなどを検討することに加え、以下のような制度等の検討も行っていくとよいと思います。

  • 児童扶養手当
  • 児童手当
  • 特別児童手当
  • 就学援助
  • 母子福祉援助
  • ひとり親家庭等医療費助成
  • 寡婦・寡夫控除
  • 生活福祉資金
  • 生活保護

 たとえば、男性においては、会社の制度として支給されていた扶養手当がなくなる可能性がある、さきに見た児童手当の受給資格がなくなるなどして、減収の可能性があります。男性が子どもを監護養育する場合、長時間の仕事が難しく、残業を減らすなど時短が必須と思われる場合、転職を余儀なくされる場合などがあり、減収の可能性を考慮に入れた生活設計が必須です。

養育費・婚姻費
計算ツール

以下の入力欄を埋めて下さい。

ひと月の養育費

00

ひと月の婚姻費用

00

※あくまで算定表に基づく目安としての数字としてご利用ください。最終的に認められることまで保証できるものではありませんので、あしからずご了承ください。

謝料(配偶者等に対するもの)

どんなときに慰謝料が認められるの

 離婚原因につき、破綻の原因が一方配偶者によると認められる場合、離婚自体の精神的苦痛を理由にして慰謝料請求ができます。そこでいう精神的苦痛は、以下のようなものでしょう。

  • 離婚そのものによる情緒的安定の喪失
  • 未成年者の将来への危惧
  • 将来の生活不安
  • 離婚による社会的評価の低下

 さらに、離婚に至るまでの間に、個別の原因があれば、それについても、慰謝料請求を検討できます。たとえば、不貞行為(=配偶者のある者が自由な意思に基づいて、配偶者以外の異性と性的な関係を結ぶこと)がある場合、暴行がある場合などです。

 実際は、両者を検討した上、特別に区別はせず、慰謝料請求をすることが多いと思います。

どれくらいの金額になるの

 相場観としては、認められても数十万円~高くても300万円程度という感覚です。高額の慰謝料が認められるケースというのは、相手方が高所得の医師であったなど、かなり特別な場合に限られると思います。

 日本の慰謝料は、残念ながら、それほど高額になることが、多くありません。たとえばアメリカなどでは、法外な賠償金を課されることがありますが、日本にはない「懲罰的賠償」制度があるからと思われます。つまり、損害の填補にとどまらない、罰としての賠償を課すことができるのです。日本では、懲罰的賠償は認められておらず、損害の補填に限られ、ここでいう損害である「精神的苦痛」は、目に見えない主観的なもので、なんとでもいえるという側面もあるため、控えめな認定になりやすいという傾向を感じます。
 しかし、だからこそ、適切な賠償を得るためには、適切な主張と立証が必要です。弁護士と一緒に、検討してみませんか。以下のような事項を検討しましょう。

  • 婚姻の破綻の原因
  • 破綻に至る経緯
  • 婚姻に至る事情
  • 婚姻生活の実情
  • 有責行為の態様
  • 婚姻期間の長さ
  • 双方当事者の年齢・職業・収入、学歴・経歴
  • 親権がどちらか
  • 生活費を支払っていたか
  • 初婚・再婚の別

 さらに、DV保護命令などの手続が先行する場合、そこで裁判所から一定の判断がなされたことを前提として、慰謝料請求権の発生の有無、慰謝料の金額などを検討するようです。

慰謝料に税金はかかるの

 慰謝料は、法的には、不法行為に基づく損害賠償請求と理解できます。損害賠償は、精神的苦痛への補償、埋め合わせをしているに過ぎないと理解でき、金銭の贈与をしているわけではないので、贈与税は発生しません。所得税も、非課税とされています。

 いくつかの場合は、例外的に、注意が必要です。
 偽装離婚の場合は、損害賠償に見せかけた贈与と評価できるため、贈与税を課税され得ます(一定の条件の下、配偶者控除は受けられるかもしれません。)。
 慰謝料の金額が、社会通念上高額な場合は、過当な部分について、金銭の贈与があったと評価できますから、その部分には贈与税が課税され得ます。
 慰謝料として、現金を支払うのではなく、不動産などを譲渡する方法で支払う場合、いわゆる代物弁済の場合は、注意が必要です。当該不動産を、時価で譲渡したものとみなされて課税をされます。当該不動産などの財産を譲渡した人に、譲渡所得税がかかります。不動産を取得した側には、不動産取得税が課税され得、登記の際には、登録免許税が必要になってきます。不動産取得後にかかる固定資産税や都市計画税の存在にも注意をしておきましょう。

配偶者以外の人にも請求できるの

 

内縁・婚約の不当破棄についても、婚姻の解消の問題ではないですが、これに類似・準じるものとして、慰謝料請求を検討することができます。

 離婚原因に、配偶者の不貞が含まれている場合、不貞の相手方に対する慰謝料請求は、別途検討することができます。

 なお、不貞の相手方に対する慰謝料請求に関し、最高裁平成31年2月19日判決が、興味深い判例として、注目を集めました。この判例によると、「夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対し、当該第三者が、単に不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできない。」とのことです。
 これを見ると、不貞相手へ法的責任を問えないように思えてしまいますが、そうではありません。この判例は、不貞相手に対し、不貞を原因とする慰謝料(不貞慰謝料、離婚原因慰謝料)の請求を否定するものではなく、離婚に伴う慰謝料(離婚自体慰謝料)を請求することは原則として認められないとするものです。
 実務上の差異は、時効の起算点にあらわれます。不貞慰謝料は、不貞行為を知ったときから3年とされることが多いでしょうが、離婚自体慰謝料は、離婚を知ったときから3年とされることが多いでしょう。通常、不貞行為があり、それが発覚した後、夫婦間の関係が悪くなって、離婚に至るという過程をたどることが多いでしょうから、離婚自体慰謝料を検討できた方が、請求側にとっては有利です。しかし、夫婦の一方は、不貞相手に対し、原則として、離婚自体慰謝料を請求できないのですから、これまで以上に、時効の問題には気を付ける必要があるでしょう。
 その他、これまでは、夫婦が離婚に至っていたか否かが、損害額(慰謝料額)を検討する上で重要なファクターと考えられてきましたが、この判決により、離婚に至ったか否かは、損害額(慰謝料額)の決定に、影響を与えなくなる可能性があります。この辺りは、さらなる裁判例の蓄積や、学説の深まりなどを期待したいと思いますが、当事者らにおいても、気になるところではないでしょうか。

フターケア

離婚後にはどんなことが必要なの

 離婚が成立したら、それで人生が終わりというわけではありません。
 むしろ、それからが新たな人生のスタートです。
 離婚の手続が終わったと一息つく間もなく、さまざまな手続などが必要になってきます。
 チェックすべき事項についてまとめましたので、一緒に検討してみましょう。

離婚後の手続きチェックリスト

氏名・住所・本籍地の変更

公的な証明書

公共サービス

お金・自分名義の財産

社会保険

財産分与による財産

子ども関連

健康保険はどうなるの

離婚後の健康保険の変更・加入はよく問題になります。以下のとおりです。

当事者が会社員または公務員の場合 基本的には、会社員または公務員の方は健康保険に加入しているはずです。給料から健康保険料が控除されている場合は、離婚をしても変更はなく、そのまま継続されます。
当事者が専業主婦(会社員や公務員の妻)の場合 夫の健康保険に被扶養者として加入している場合は、そこから外れることになります。
就職するのであれば健康保険に、就職しない場合は国民健康保険に加入することになります。
自営業またはアルバイトの場合(国民健康保険の場合) 自営業やアルバイトの方は、国民健康保険に加入しているはずですので、特に変更なくそのまま継続されます。
子どもの健康保険について 子どもの保険は、親権や同居の有無を問わず、元世帯主(主に元夫)の保険の被扶養者として加入し続けることができます。
しかし、元世帯主から親権者の健康保険(主に元妻)に移したいという場合は、書類による手続きを行えば健康保険を移すことができます。

 もし、保険料の支払いが困難な場合は、役所に相談して、減額又は免除の届の提出を検討しましょう。

離婚した場合の氏(名字)はどうなるの

 婚姻の際に、氏(名字)を他方当事者のものに変更していた場合、離婚によって、法律上当然に、以前の名字に戻ります。
 しかし、名字が戻ってしまうと、仕事や私生活に支障が出る、面倒であるなどと言った場合もあるでしょう。そのような場合、離婚後3か月以内に、届出をすることにより、婚姻時の名字を、引き続き使用することができます(婚氏続称制度)。

 では、子どもの名字はどうでしょうか。
 子どもの名字は、離婚によっては変更されません。変更したい場合、家庭裁判所に対し、子の氏の変更許可申立てを行い、家庭裁判所の許可を得る必要があります。親権者でない側の親の戸籍から親権者である親の戸籍に移すためのケースであれば、通常問題はなく、即日の審査が可能な場合もあります。

 なお、以下のような場合は、子の氏の変更は難しいとされています。
  × 単に家名承継のためだけに変更する
  × 親権者の変更手続をとらないまま氏の変更だけをする

生活設計はどうすればよいの

 離婚により、生活が一変する方も多いと思います。
 以下のような制度をうまく使って、生活設計を検討しなおしてみましょう。

  • 児童扶養手当
  • 児童手当
  • 特別児童手当
  • 就学援助
  • 母子福祉援助
  • ひとり親家庭等医療費助成
  • 寡婦・寡夫控除
  • 生活福祉資金
  • 上下水道料金の減免
  • JR通勤定期券の割引
  • 生活保護

 財産分与等で、不動産の名義が変更される場合、登記が必要です。税金の心配もあるかもしれません。生活設計のために、転居も検討しなければならないかもしれません。離婚を機に、保険の見直しも必要かもしれません。
 弊所では、司法書士税理士不動産業者保険関係者などとも協力しながら、このような悩みにもワンストップで対応できる体制を整えています。

再婚してよいの

 恋愛は自由ですから、再婚についても自由と思われるところですが、父親がだれかわからなくなるという不都合を避けるため、女性には再婚禁止期間が設けられています。

 この規定により、女性は、離婚してから、100日間を経過した後でないと、再婚ができません。

 弊所では、念のため、100日経過後の再婚をおすすめしていますが、以下のような場合であれば、女性でも離婚後すぐの再婚が認められる場合があります。

  • 離婚時点で妊娠していない場合
  • 前夫と再婚する場合
  • 離婚前から妊娠しており、出産後に再婚した場合
  • 高齢で妊娠の可能性がない場合
  • 不妊手術を受けている(妊娠ができない)場合
  • 夫の生死が3年以上不明で、裁判により離婚を認める判決を得ている場合